研究概要


研究の背景・目的

日本における政権の変動、公共政策の変化といった一連の政治変動が、どのような衝撃を、政策過程や市民社会に与えるかを、複数レベルの調査を行い検証する。政治構造が実質的に変化したとすれば、最初に中央政府や政党と緊密な関係を有し利益の確保に努力する圧力団体の態度に変容が生じ、それとともにアクター間の政策ネットワークが変容し、さらに分権改革とともに地方政府や草の根の市民社会に波及すると予想される。

本研究は順次、1)圧力団体、2)政策ネットワーク、3)地方政府・市民社会を体系的に調査し、圧力団体、政策ネットワーク、市民社会の3レベルから日本政治の構造変動と政治・社会関係の変容を比較政治的に解明することを目的とする。世界の学界において、政治と社会の相互規定性やそれによる変動は常に議論されるが、比較実証され、検証されることは少ない。時系列的な比較やいくつかの側面からの立体的な実証研究も稀である。今回は2009年以後の現代日本を素材にそれを行う。


研究の方法

国際的に「一党優位政党制以後」および13カ国市民社会比較、さらに既存の日本市民社会・地方政府データから、仮説を設定する。次いで、中央の圧力団体調査、地球環境政策ネットワーク調査、4種類の市民社会組織と地方政府の調査を各年に行い、諸仮説を比較によって検証していく。


期待される成果と意義

これまでの仮説と予測される結果から、意義を述べると、1)3次の圧力団体調査からは、政党の勢力配置など政治変動の対社会主導性、つまり政権政党交代の大きな社会へのインパクトが示唆されている。2)政策ネットワーク調査からは、自民党優位体制下で比較政治的にみた日本のアクター関係の「少数固定性」が顕著であったが、2009年以後の新体制において、アクターのシフト、流動化が予想される。ネットワーク形も労働やNGO、専門家セクターへの拡大など構造変化も予測される。3)市民社会組織・地方政府調査から、それがどの程度、全国的に地方レベルまで浸透したかが確認される。以上から、現代日本の今後の政治シナリオやその安定性が予測可能となり、新体制の比較政治理論的な位置づけを行うことができる。